地域の人たちの温かさにふれた、どんど焼き。思い思いに過ごしたのどかな時間 投稿日: 2023-01-27 スタッフコラム暮らしの知恵風習 先日、生まれて初めてどんど焼きに参加してみた。場所は福岡県みやま市山川町の北関(きたのせき)地区。この地区の子ども会が主催となって、どんど焼きを行うという。 山や田んぼに囲まれたのどかな道を車で走る。北関以外の地区でもどんど焼きが行われているようで、所々、どんど焼きのやぐらが組み立てられている様子を見かけた。 現地の方に教えてもらった住所にたどり着くと、そこは川のせせらぎが響く河川敷だった。車を降りると、地域の人たちの掛け声が聞こえる。どんな景色が見られるだろう。期待に胸を躍らせながら、声がする方に向かった。 目次1 山々を突っ切る巨大なやぐら2 毎年の、子どもたちの楽しみ3 やぐらに火をつける4 それぞれの過ごし方5 思い思いに過ごす、暖かな時間6 編集後記「地域の人たちの温かさに触れた時間」 山々を突っ切る巨大なやぐら 到着すると、どんど焼きのやぐらが組み立てられている光景が目に入った。大人たち数十人で組み立てられているやぐらは、周りの山々を突っ切るかのように、空に向かって堂々とそびえ立っている。 みんなで協力してやぐらを組み立てていく 全長10mもの高さまでのぼるこのやぐらだが、現地の方たちに話を伺っていると、数十年前は地域の子どもたちだけで竹取りからやぐら作りまで行っていたと言う。 当時のことを知る60代の男性はこう話す。 「昔は、子どもたちだけでね、みんなで一生懸命作っとりましたよ。今思うとちっこい(小さい)やぐらやったかもしれんですけどね」 「ところで、いつからこのどんど焼きは行われているんですか?」そう伺うと、 「いつなんでしょうね。私たちが子どものときからやっていたので。たぶん戦前からやっていたと思いますよ」と答えてくれた。 当日の朝に刈り取った竹を使って、やぐらを組む 周りの山々を突っ切るやぐら 毎年の、子どもたちの楽しみ やぐらが完成したら、燃焼材となる笹の葉を中に入れて、お焚き上げをする正月縄飾りも入れていく。 正月飾りを竹にかけていく 北関地区の家々に飾られていた、この正月飾りたち。2日前に「もぐら打ち」という、子どもたちがこの地区の家1軒1軒の玄関先を竹竿で叩いていく行事があるのだが、その際どんど焼き当日にしめ縄飾りを玄関先に置いてもらうようにお願いし、当時の朝に回収するのだそう。 子どもたちもお手伝い 子ども会の責任者を務める男性は語る。 「今年は雨が降りよったけん、やるかどうか迷ったとですけど、子どもたちがやりたがってたんでですね(笑)雨の中、カッパ着てやりましたよ」 なんでもこのもぐら打ちと言う行事、子どもたちは訪れた家の皆さんからお菓子を貰えるそうで、子どもたちにとってはそれが何よりの楽しみなのだそう。 地域の人たちの健やかな1年を願うやぐら 「お菓子、いっぱい貰えるから嬉しい」と、責任者の男性が連れた小学生の女の子が笑いながら言った。 やぐらに火をつける 準備が整い、いざ本番。竹竿の先端にワラを巻きつけた棒を使って、やぐらに火をつけていく。 この火付け役という重要な仕事を担うのが、地域の子どもたちだ。この子どもたちが神様の使いとなって火をつけることによって、神様からのご加護をいただけるとの言い伝えがあるらしい。 棒に火が点火され、慎重に、慎重に、子どもたちがやぐらに向かって歩いていく。 緊張した面持ちで、やぐらに火をつけていく 前日に雨が降ったせいでなかなか火がつかないと言うトラブルがあったものの、何度かトライしていると、いよいよ火の手が上がった。 火をつけた子どもたちは、喜ぶやらちょっと怖がるやらと大興奮の様子。大人たちも思わず「おぉー」と歓声を上げた。 煙の上がるやぐらを静かに見つめる やぐらの周りにもうもうと煙が立ち込める。見たこともないくらいの大きな火に思わず圧倒され、写真を撮るのも忘れてしまうくらい見惚れてしまった。パチパチと、竹や正月飾りが爆ぜる音が曇り空の下で響いた。 てっぺんまで火が昇っていく 天気の良い日にはやぐらの頂点まで火が上がるそうだが、この日は湿気が多かったせいか、途中、やぐらがドシーンと大きな音を立ててしなっていった。 「いつもやったら、てっぺんまで火が上がるとになー」 やぐらを組んでいた男性が、残念そうな声で言った。 その後もやぐらはどんどんと燃えていき、数十分後には焼けた竹と、灰だけが静かに残った。さっきまで巨大なやぐらが組まれていたことが、まるで嘘のように見える光景だった。 煌々と燃えるやぐら それぞれの過ごし方 ある程度火が鎮まると、神様の使いとしてのお役目を終えた子どもたちが、焼け跡の前ではしゃぎ出した。大人たちも、焼け跡で暖を取りながら談笑している。 焼け跡を前にはしゃぐ 子どものときからこのどんど焼きに参加されているという40代の男性に、話を伺った。 「どんど焼き、ほうげんきょうって言う地域もありますけど、昔はあちこちでやりよって、今は少なくなりましたねぇ。子どもたちも少ないけん。でも、伝統行事ってやつだから大事にしていかんとですね。これのおかげで、私は今まで病気や怪我もせんとやってこれたけん」 暖をとりながら、談笑する また、小学1年生の娘さんと、3歳になる息子さんを連れた女性にも話を伺った。 「結婚してここに住むようになったから、もうこれに参加して何年目ですかね・・・」 「あんたは、3年目たい」と、その人のご主人。 「らしいです(笑)地元ではやってなかったので、新鮮ですね。下の子も小学生になったら参加させたいです」 まだ何が行われているかよくわかっていない3歳になる息子さんは、小学生のお兄さんお姉さんと一緒に、楽しそうにはしゃぎ回っていた。 思い思いの時間を過ごしていく 思い思いに過ごす、暖かな時間 お昼どきになると、お餅やさつまいもが持ち込まれた。やぐらの残り火や炭で、これらを焼くという。これもまた、どんど焼きの楽しみの一つだそう。子どもたちも目を輝かせて、アルミホイルに包まれた焼き芋や、金網に乗せられたお餅を眺めていた。 黄金色に焼けたさつまいも もっちりと焼けたお餅 私も2、3個いただいたが、さつまいもは黄金色に輝いていて、甘味があってとてもおいしかった。 さつまいもを持ってきてくれた方が、マルチーズとヨークシャーテリアを連れてきた。マルチーズは、私が食べていた焼き芋を物欲しそうな目で見つめている。子どもたちは可愛いお客さんを大歓迎の様子で、僕も私もと、リードを取り合っていた。 人なつっこいマルチーズ 少し緊張した面持ちのヨークシャーテリア お腹を満たした子どもたちは、まだそこらじゅうを走り回ってはしゃぎだした。お父さんが乗ってきた軽トラックの荷台に乗ったり、落ち葉を投げ合ったり。 また、小学4年生の男の子は私のカメラに興味津々で、何度も「撮らせて」とお願いしてきた。 カメラの持ち方を教えると、早速構えてくれた 子どもたちの中では一番年長の、小学5年生の女の子がこう話してくれた。 「こうやって毎年みんなで遊べるから楽しみにしてます。こうやって集まることもないし。どんど焼きでは、モグラうちが一番楽しいです。お菓子がもらえるから(笑)」 将来の夢は何かあるの?と聞くと、照れ臭そうにこう答えてくれた。 「ファッションデザイナーか、YouTuberになりたくて。歌い手とか、そういうのになりたいなって」 走り回る子どもたち 「パパー、公園行ってきていいー?」 焼け跡の周りではしゃいでいた子どもたちは、大きな声でそう言うと、近くにある公園へと走っていった。 近くの公園へと向かう 大人たちも、子どもたちも、みんなが思い思いに過ごしたどんど焼き。ここで過ごした1日は、地域の人たちがお互いの垣根を超えて交流し合う、とても暖かな時間だった。これからも、この暖かな時間を残していってほしい。そう願ってやまない1日だった。 編集後記「地域の人たちの温かさに触れた時間」 福岡県みやま市の北関地区で、長きにわたって行われていると言うこのどんど焼き。 現地の方のお誘いで参加させていただいた今回の機会でしたが、現地のみなさまがとても温かく受け入れてくださり、とても有意義な時間を過ごせました。 子どもたちが無邪気にはしゃぎ回る姿や、地域の皆さまの協力し合う姿を見て、この地域の深い繋がりを感じるとともに、地域のコミュニティのより良い在り方を教えられた気持ちでありました。 取材にご協力いただいた、北関地区の皆さま、ありがとうございました。 The following two tabs change content below.この記事を書いた人最新の記事 Tomohiro 地場の仕事に興味を持ち、イケヒコに入社。当初はい草の“い”の字も知らなかったが、今では2LDKの賃貸に置き畳とい草ラグを敷き詰めるほどのい草好き。もちろん布団の上には寝ござ。将来の目標は柴犬を飼うこと🐶 最新記事 by Tomohiro (全て見る) 一人暮らし、結婚、引っ越し。新生活をより快適に!新生活で準備していると嬉しい「プラスα」のインテリアアイテムをご紹介。 - 2023.03.28 4月29日は「畳の日」。私たちの暮らしを豊かにしてくれる、畳の魅力をご紹介 - 2023.03.27 冷え性の改善におすすめ!今注目の温活とは?オススメの温活グッズもご紹介! - 2023.02.07 関連記事: 100人に聞いた年末年始の過ごし方。年末年始の過ごし方をランキング形式で紹介。 しめ縄飾りのお焚き上げ。小正月のどんど焼きについて解説。左義長、ほうげんきょう、その他の呼び名についても解説。 喜んで貰える父の日プレゼントの選び方 【2023-2024年】正月飾りはいつからいつまで飾る?飾る期間や処分方法を解説。
先日、生まれて初めてどんど焼きに参加してみた。場所は福岡県みやま市山川町の北関(きたのせき)地区。この地区の子ども会が主催となって、どんど焼きを行うという。 山や田んぼに囲まれたのどかな道を車で走る。北関以外の地区でもどんど焼きが行われているようで、所々、どんど焼きのやぐらが組み立てられている様子を見かけた。 現地の方に教えてもらった住所にたどり着くと、そこは川のせせらぎが響く河川敷だった。車を降りると、地域の人たちの掛け声が聞こえる。どんな景色が見られるだろう。期待に胸を躍らせながら、声がする方に向かった。 目次1 山々を突っ切る巨大なやぐら2 毎年の、子どもたちの楽しみ3 やぐらに火をつける4 それぞれの過ごし方5 思い思いに過ごす、暖かな時間6 編集後記「地域の人たちの温かさに触れた時間」 山々を突っ切る巨大なやぐら 到着すると、どんど焼きのやぐらが組み立てられている光景が目に入った。大人たち数十人で組み立てられているやぐらは、周りの山々を突っ切るかのように、空に向かって堂々とそびえ立っている。 みんなで協力してやぐらを組み立てていく 全長10mもの高さまでのぼるこのやぐらだが、現地の方たちに話を伺っていると、数十年前は地域の子どもたちだけで竹取りからやぐら作りまで行っていたと言う。 当時のことを知る60代の男性はこう話す。 「昔は、子どもたちだけでね、みんなで一生懸命作っとりましたよ。今思うとちっこい(小さい)やぐらやったかもしれんですけどね」 「ところで、いつからこのどんど焼きは行われているんですか?」そう伺うと、 「いつなんでしょうね。私たちが子どものときからやっていたので。たぶん戦前からやっていたと思いますよ」と答えてくれた。 当日の朝に刈り取った竹を使って、やぐらを組む 周りの山々を突っ切るやぐら 毎年の、子どもたちの楽しみ やぐらが完成したら、燃焼材となる笹の葉を中に入れて、お焚き上げをする正月縄飾りも入れていく。 正月飾りを竹にかけていく 北関地区の家々に飾られていた、この正月飾りたち。2日前に「もぐら打ち」という、子どもたちがこの地区の家1軒1軒の玄関先を竹竿で叩いていく行事があるのだが、その際どんど焼き当日にしめ縄飾りを玄関先に置いてもらうようにお願いし、当時の朝に回収するのだそう。 子どもたちもお手伝い 子ども会の責任者を務める男性は語る。 「今年は雨が降りよったけん、やるかどうか迷ったとですけど、子どもたちがやりたがってたんでですね(笑)雨の中、カッパ着てやりましたよ」 なんでもこのもぐら打ちと言う行事、子どもたちは訪れた家の皆さんからお菓子を貰えるそうで、子どもたちにとってはそれが何よりの楽しみなのだそう。 地域の人たちの健やかな1年を願うやぐら 「お菓子、いっぱい貰えるから嬉しい」と、責任者の男性が連れた小学生の女の子が笑いながら言った。 やぐらに火をつける 準備が整い、いざ本番。竹竿の先端にワラを巻きつけた棒を使って、やぐらに火をつけていく。 この火付け役という重要な仕事を担うのが、地域の子どもたちだ。この子どもたちが神様の使いとなって火をつけることによって、神様からのご加護をいただけるとの言い伝えがあるらしい。 棒に火が点火され、慎重に、慎重に、子どもたちがやぐらに向かって歩いていく。 緊張した面持ちで、やぐらに火をつけていく 前日に雨が降ったせいでなかなか火がつかないと言うトラブルがあったものの、何度かトライしていると、いよいよ火の手が上がった。 火をつけた子どもたちは、喜ぶやらちょっと怖がるやらと大興奮の様子。大人たちも思わず「おぉー」と歓声を上げた。 煙の上がるやぐらを静かに見つめる やぐらの周りにもうもうと煙が立ち込める。見たこともないくらいの大きな火に思わず圧倒され、写真を撮るのも忘れてしまうくらい見惚れてしまった。パチパチと、竹や正月飾りが爆ぜる音が曇り空の下で響いた。 てっぺんまで火が昇っていく 天気の良い日にはやぐらの頂点まで火が上がるそうだが、この日は湿気が多かったせいか、途中、やぐらがドシーンと大きな音を立ててしなっていった。 「いつもやったら、てっぺんまで火が上がるとになー」 やぐらを組んでいた男性が、残念そうな声で言った。 その後もやぐらはどんどんと燃えていき、数十分後には焼けた竹と、灰だけが静かに残った。さっきまで巨大なやぐらが組まれていたことが、まるで嘘のように見える光景だった。 煌々と燃えるやぐら それぞれの過ごし方 ある程度火が鎮まると、神様の使いとしてのお役目を終えた子どもたちが、焼け跡の前ではしゃぎ出した。大人たちも、焼け跡で暖を取りながら談笑している。 焼け跡を前にはしゃぐ 子どものときからこのどんど焼きに参加されているという40代の男性に、話を伺った。 「どんど焼き、ほうげんきょうって言う地域もありますけど、昔はあちこちでやりよって、今は少なくなりましたねぇ。子どもたちも少ないけん。でも、伝統行事ってやつだから大事にしていかんとですね。これのおかげで、私は今まで病気や怪我もせんとやってこれたけん」 暖をとりながら、談笑する また、小学1年生の娘さんと、3歳になる息子さんを連れた女性にも話を伺った。 「結婚してここに住むようになったから、もうこれに参加して何年目ですかね・・・」 「あんたは、3年目たい」と、その人のご主人。 「らしいです(笑)地元ではやってなかったので、新鮮ですね。下の子も小学生になったら参加させたいです」 まだ何が行われているかよくわかっていない3歳になる息子さんは、小学生のお兄さんお姉さんと一緒に、楽しそうにはしゃぎ回っていた。 思い思いの時間を過ごしていく 思い思いに過ごす、暖かな時間 お昼どきになると、お餅やさつまいもが持ち込まれた。やぐらの残り火や炭で、これらを焼くという。これもまた、どんど焼きの楽しみの一つだそう。子どもたちも目を輝かせて、アルミホイルに包まれた焼き芋や、金網に乗せられたお餅を眺めていた。 黄金色に焼けたさつまいも もっちりと焼けたお餅 私も2、3個いただいたが、さつまいもは黄金色に輝いていて、甘味があってとてもおいしかった。 さつまいもを持ってきてくれた方が、マルチーズとヨークシャーテリアを連れてきた。マルチーズは、私が食べていた焼き芋を物欲しそうな目で見つめている。子どもたちは可愛いお客さんを大歓迎の様子で、僕も私もと、リードを取り合っていた。 人なつっこいマルチーズ 少し緊張した面持ちのヨークシャーテリア お腹を満たした子どもたちは、まだそこらじゅうを走り回ってはしゃぎだした。お父さんが乗ってきた軽トラックの荷台に乗ったり、落ち葉を投げ合ったり。 また、小学4年生の男の子は私のカメラに興味津々で、何度も「撮らせて」とお願いしてきた。 カメラの持ち方を教えると、早速構えてくれた 子どもたちの中では一番年長の、小学5年生の女の子がこう話してくれた。 「こうやって毎年みんなで遊べるから楽しみにしてます。こうやって集まることもないし。どんど焼きでは、モグラうちが一番楽しいです。お菓子がもらえるから(笑)」 将来の夢は何かあるの?と聞くと、照れ臭そうにこう答えてくれた。 「ファッションデザイナーか、YouTuberになりたくて。歌い手とか、そういうのになりたいなって」 走り回る子どもたち 「パパー、公園行ってきていいー?」 焼け跡の周りではしゃいでいた子どもたちは、大きな声でそう言うと、近くにある公園へと走っていった。 近くの公園へと向かう 大人たちも、子どもたちも、みんなが思い思いに過ごしたどんど焼き。ここで過ごした1日は、地域の人たちがお互いの垣根を超えて交流し合う、とても暖かな時間だった。これからも、この暖かな時間を残していってほしい。そう願ってやまない1日だった。 編集後記「地域の人たちの温かさに触れた時間」 福岡県みやま市の北関地区で、長きにわたって行われていると言うこのどんど焼き。 現地の方のお誘いで参加させていただいた今回の機会でしたが、現地のみなさまがとても温かく受け入れてくださり、とても有意義な時間を過ごせました。 子どもたちが無邪気にはしゃぎ回る姿や、地域の皆さまの協力し合う姿を見て、この地域の深い繋がりを感じるとともに、地域のコミュニティのより良い在り方を教えられた気持ちでありました。 取材にご協力いただいた、北関地区の皆さま、ありがとうございました。