繋がるものづくり-い草ラグ生産者 吉武照生さんが語る、ものづくりの魅力-
シリーズ「繋がるものづくり」では、イケヒコ商品に携わる全ての方々(生産者・加工先・開発者・お客様)の生の声を取り上げることで、イケヒコとお客様を繋げていく事を目的としています。
い草ラグ生産者 吉武照生さんが語る、ものづくりの魅力
今回は、福岡県の柳川市でイケヒコのい草ラグの生産に携わってくださっております、い草ラグ生産者の吉武照生さんを取り上げさせて頂きます。

[職人]
吉武 照生
Teruo Yoshitake
1958年12月27日生まれ。
18歳の頃に、福岡県筑後地方の名産品掛川織りの生産を行なっていた父の後を継ぐ。
「丁寧に丁寧な仕事」を心がけながら、新商品のものづくりを一番に楽しむ、生粋のベテラン職人。
Interview
シーズンオフのものづくりが一番楽しい!と語る吉武さんに、ものづくりの魅力について語って頂きました。
丁寧な仕事をするだけ
—1日のお仕事の流れを教えてください。
吉武
まず朝一番に、前日の夜に準備したい草を織機(い草を織る機械)に乗せる。
冬なんかは、い草が乾燥して端っこが切れてしまったりするから袋に入れて寝かせて準備しとるけど、夏とか湿気の多い時はカビが生えないようにそのまま織機に乗せとる。
そんで、織機を動かしたらスタート。
あとは織機の様子を見ながらい草ラグを織っていって、出来上がったものを磨いて干して、出荷していく。
そんでさっき言ったごと、次の日に織るい草を準備して1日が終わる。
1日平均何枚できますか?とかよく聞かれるけど、い草の状態はその日によって変わってくるけん、平均何枚織れるっていうのは実はないっちゃんね。
—仕事において、特に気をつけられていることはございますか?
吉武
もう、丁寧な仕事をするだけ!いかにい草を大事に扱うか。
さっき言ったように、い草の状態を見てダメなら外すし、オーケーなら織機に乗せるし、乗せとる時もい草の状態が悪ければ外すし。
丁寧にその…丁寧に丁寧な仕事するだけ!笑
それがツボやし、コツやし、俺のこだわりやし…そこに全部集約しとる。
もう、とにかく丁寧な仕事するのみ!
—すごく繊細な作業だと思うのですが…
吉武
繊細というか、昔からそういう仕事してきてるから。
俺は2代目やし、親の代からそういう仕事を見てきているから、それが当たり前って思っとる。
子どもの時からずっとそういう仕事を見てきているからこそ覚えてきたってのもあるし、自分がこの仕事始めて自分なりに工夫したものもある。
—ご両親の代からされているんですね。
吉武
そう、昭和34年。俺が産まれた次の年から。畳表の機械1台から始まってね。
その後、畳表の生産から寝ござの生産に移って、その次に*掛川織りの生産に移って…。
掛川織りが一番長い。オリジナルの柄の掛川織りでね。
*福岡県筑後地方特産の花ござ。県の無形文化財に指定されている。
—オリジナルの掛川織りを作られていたんですね。
吉武
そう、自分で柄とか色とか決めてね。
ただ、オリジナルだとお客さんのニーズに応えられんごとなってきて。
「青が欲しい」って言われても「うちは赤しか作っとらん」みたいなね。
やけん、問屋さんに頼んで柄を作って貰って、こっちで生産するっていう今の形になった。
シーズンオフが一番楽しい
—このお仕事を継がれたのはいつ頃になりますか?
吉武
18歳の時だから、今年で43年目。
—43年間の中で、い草の生産量の減少など様々なことがあったと思うのですが、そのような現状についてはどう思われますか?
吉武
まぁ、時代やけん仕方ないと思う。
ただ、お客さんのニーズを掴まえていけば少しは変わると思うよ。
今、「イケヒコのい草ラグが欲しい」って言ってくれる人がどれくらいおる?
他所との違いをどれくらい分かっとる?
そのためにも、自分の持っているノウハウとか意見とか、そこはアドバイスしとる。
変わって欲しいし、活かして欲しいし。
—ありがとうございます。そのような時代の変化の中でも、このお仕事を続けられてきた理由をお聞かせ頂けますか?
吉武
なんやろうか。
本当はね、この仕事したくなかったんだよ笑
—そうだったんですか!
吉武
服も汚れるし、1日中家の傍におるし笑
でも、この仕事をしていると、ものづくりの面白さはある。
俺がこの仕事をしていて面白いのはシーズンオフ!
新柄を作る、色を乗せる、自分の想い通りにしながら…「これならお客さんも気にってくれるかもしれん」って流行りの色を乗せてみたり、もちろん失敗はあるけれど、そうやって新しいものを作りよる時が一番楽しい。
—それはご両親の代からずっと続けられてきた、オリジナルのものづくりという想いがあるのでしょうか?
吉武
そういう気持ちは親父の代から育ってきたからこその気持ちもあるかもしれん。
元々、自分が持っているものかもしれんし、親の影響かもしれん。
そこは分からんけど。
今後のこと
—吉武さんご自身にとって、い草とはどのような存在ですか?
吉武
そりゃぁ、普通に当たり前にあるものやけん考えたこともなか笑
それこそ生まれた時からい草はあったし、家も畳だったし、ここ(柳川市)もずーっとい草の田んぼやったからい草の田んぼで遊びよったし、家で干しているゴザを踏んでしまって怒られたりもしよったし。
空気と一緒!笑
—では最後の質問になります。吉武さんご自身は後何年この仕事を続けられたいですか?
吉武
俺が62歳だから、75歳までは現役で仕事をしたい。
だからこそ機械の更新もしよるし、新柄のサンプルを作る時が一番楽しい。
お客さんのニーズは多様化してくるし、多様なものを作らないといけんって思うし、作るべきと思う。
これから15年、20年生き残っていくためにはそれは必要だと思う。
イケヒコの若いスタッフにも頑張ってもらわないかんけんね!責任重いよ!笑
—はい! 貴重なお話を頂きありがとうございました。
吉武
ありがとうございました!
収録日:2020年2月19日
収録場所:福岡県柳川市
インタビュー・撮影:伊東朋宏
企画:株式会社イケヒコ・コーポレーション
吉武照生さんが生産していらっしゃる製品
株式会社イケヒコ・コーポレーション
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