開発者:塩塚 直司(しおつか なおし)
開発者:塩塚 直司(しおつか なおし)
入社以来い草商品やファブリックのラグ、こたつ、クッションなど様々な商材のものづくりに取り組んできた。
やわらかい物腰の奥に秘めた物づくりへの思い。社内だけでなく、お客様からも加工先様からも頼られる存在。
座り心地とデザインにこだわった 座布団「刺し子」シリーズ
(座り心地とデザインにこだわった 座布団「刺し子」シリーズ)
座布団…。なんとなく懐かしささえ感じるこの言葉の響き。
以前の座布団は、お盆やお正月の時期には必ずまとまった数量が売れるものだった。
お部屋の調度品の中でも決して目立たず、主役にはならないものの今日でも一定の需要を保ち続けている。
今やニッチな商材とも言える座布団の開発に塩塚は取り組んできた。

今のリビングに合わせやすく

塩塚が市場の座布団の品揃え調査をしていくと、ほとんどが昔ながらの和柄のプリント生地でつくられた座布団だった。
今のライフスタイルにこれらの座布団はマッチするのか…?
もっと、今のリビングに合わせやすいシンプルなデザインの商品があってもいいんじゃないか…? そんな発想で塩塚は刺し子調生地の座布団を作ってみた。
「さっそく販売をスタートしました。お客様がこの座布団に対して感じていることってどんなことか気になり、直に声を拾うことが出来るクチコミを読み込みました。するとこの刺し子座布団に対して参考になるコメントがたくさんありました。」
  • ・和室とリビングに合う和風カジュアルな座布団を探していた。
  • ・来客があるがフローリングに直接座らせれない。だけど和柄では…。この商品は合わせられる色を選べるのでよかった。
  • ・かわいい。
  • ・プリントだと思っていたら織りだった。
  • ・はじめふかふかだったが、ぺちゃんこになった。
  • ・厚みが無くなった。
  • ・注文したが到着が遅い。
などのコメントが。 高評価のコメントには、和洋どちらにも合うデザインに対するコメントが、低評価のコメントには、へたりに対する不満が多く見られた。
「クチコミのコメントを読んでいくと、シンプルなデザインに対してはしっかり支持いただいていました。考えていた通りでしたね。気になったのは、へたりに対するコメントです。座布団はへたって当たり前、もしくはへたってもある程度は使えるけど…、といったコメントが。すぐへたるという、これまでの座布団の常識を変えたい、と思いました。」

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床に座る暮らしを提案したい

実際のクチコミをテキストマイニングしたもの:左/ ★4~5のコメント、右/ ★1~3のコメント
(実際のクチコミをテキストマイニングしたもの:左/ ★4~5のコメント、右/ ★1~3のコメント)
「そもそも、座布団とクッションの違いって何なんでしょう?
クッションはソファやチェアの上で使うことが多いアイテムで、座布団は主に床に置いて使うもの。
世の中にあるクッションや座布団は、椅子の上で使う提案の物ばかりがあまりにもあふれている、と思うんです。」
塩塚の話を聴きながら、自分自身、普段自宅でソファを背もたれに床にごろりとくつろいでいるのを思い出した。居心地の良いソファの上でくつろぐのも気持ちがいいが、やはり床に座った時に感じる低い目線から広がる視界の中で、座ったり寝そべったりできる時間は、よりゆったりとくつろいでいるような気がする。そこでは、ゆっくりと時が過ぎていく。
「座布団の担当として床に座ってくつろぐ生活を提案したいとずっと思ってきました。」

硬い・やわらかい・硬い、を重ねる

刺し子座布団と塩塚の横顔
和にも洋にもあわせやすいシンプルなデザインの座布団で、スタートからそこそこの実績を作ることが出来た。
クチコミから得られた改善点の1つだった発送までにかかる時間についても、生産体制を変えることで翌日発送出来る体制を作り、順調に実績を伸ばしていく。
お客様が欲しい時に欲しい物が手に入る、それを実現してから、当初3千枚だった販売は3年ほどで2万枚を超す実績に届いていた。
「次に取り組んだのがへたりにくい座布団、そしてフローリングの上でより使い勝手の良い座布団でした。その時、ヒントとなったのは自分がこれまで作ってきた様々な商材のモノづくりアイデアです。以前作っていたい草素材の座布団の仕様がヒントになりました。」
い草の座布団は、側生地にい草の織生地を使い中材にはスポンジ素材やポリエステル綿を入れて作る。自然素材であるい草の側生地は一般的な生地に比べて硬い。その硬い生地に挟まれたやわらかい中材の組合せで底付き感が少なくクッション性がある座布団になる。これと同じように、硬い・やわらかい・硬い、と重ねると良いのではないかと考えた。
「い草生地の座布団は、側生地がい草の織生地で硬さがあってそれ自体もほどよいクッション性があるんです。刺し子調の座布団は綿生地を使っていて生地自体がやわらかい。中材にその分硬さとクッション性を持たせるべきだろうと。色々考えた末に反毛(はんもう)の中材を上下に使うことを思いつきました。」
反毛とは使われなくなった繊維製品をほぐして作られたリサイクル素材のこと。さかのぼれば明治時代ごろから用いられていた手法。工場で端材となった生地や落ちわたなどを集め、わたの状態に戻して固めてフェルトにする。日本の「もったいない」の精神が生きた材料といえる。 刺し子調側生地の中材としてこの反毛フェルトの間に40㎜の固綿を挟むことによって、程よいクッション性を持たせることができた。まさに、硬い・やわらかい・硬い、と重ねることで絶妙なクッション性とへたりにくさを実現したのだ。
反毛のフェルト材と固綿の3層構造
(反毛のフェルト材と固綿の3層構造)
「座布団としての重みとフラットなフォルムにもこだわった。フローリングで座布団を使用する際、ある程度の重さがないとちょっと足先が当たったりしたときに動いてしまいます。その点、この中材はそれ自体が重みがあるので充分でした。」
反毛フェルトは、ぎっしりと繊維を固めて作られているので重みがあり硬い。そのフェルトで固綿の上下を挟んでいるため、思った以上にずっしりと重みを感じる。
また、この中材を使うことでふっくらとした綿入れ座布団とは異なり、フラットなフォルムも実現しカジュアルな印象に。しまうときもかさばらず積み重ねて収納が可能。見た目と実用性の両方を実現することができた。
更に、まとめ買いで購入されることが多かったことから、飲食店や施設などからのご注文も多いと考え、汚れても洗って長く使ってもらえるように側生地は外して洗えるカバータイプにした。

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世界に伝えたい座布団の暮らし

座布団について説明する塩塚
刺し子座布団で、和にも洋にも合わせやすく座り心地の良い座布団を作ることができた。
今後、どのような物づくりに取組んでいくのか。
「座ってくつろぐ、という生活をもっともっと広げていきたいですね。海外の方のライフスタイルも少しずつ変わってきているんじゃないかと思うんです。家の中で靴を脱いだり、床に座ったり…。日本国内はもちろん海外にも座ってくつろげる居心地いい座布団を提案していきたいですね。」
海外を見据えると日本製への期待値の高さとその責任を感じる、と塩塚。
昔ながらの座布団づくりを今のライフスタイルに合う形に。 広がりゆく座布団の世界に期待が高まる。
倉庫を歩く塩塚

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イケヒコ編集部

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